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2012.04.26 Thursday  | - | - | 

「閉鎖病棟」帚木蓬生 〜「特集・山本周五郎賞完全制覇」第8回

第8回(1995年)山本周五郎賞受賞作品は、 帚木蓬生 『閉鎖病棟』でした。

このあたりから今作から山本賞の質が変わってきたように思います。それまでは重苦しいながらもどこか絵巻のような、ファンタジーと紙一重の、現実と微妙にずれた世界観を読む事で読者が救済されるような作品が多かったのですが、今後は大地に足をガツッとつけた、現実世界での嘘偽りない暗部に真っ向から向かい合った作品が多くなってくるのです。
なかでもこの作品は現役精神科医の作者が、あくまでもフィクションとして「患者」の立場から物語を書くという、非常に稀有な背景の作品です。


例えばどこかに出かけます。出かけたら家に帰ります。
出かけなかったらどうでしょう?やっぱり家にいます。
外へ羽ばたこうが、引きこもろうがそこには必ず「家」があります。

しかし、それがなかったら?
「家」を強制的に取り上げられてその後の自由も許されないとしたら?
本来なら人権問題、人としての尊厳を脅かすこのような違法な監禁行為を誰からも非難されず実行される場合があるとしたら?
それは「精神疾患」という病気にかかった場合です。病気で人や自分を傷つけるから、被害が及ばないように隔離して治療するのです。

入院病棟内で患者の演じる劇の脚本をある入院患者が書きます。それぞれ能力や適性を生かして考えられた配役に応じて皆が練習し、演じます。

私にはわかりません。この人たちのどの辺が隔離されるほどの「精神疾患」なのか。
少なくとも私には脚本を書くことなどできないし、演じる事も難しいです。(カラオケは好きだけど、笑)
確かに過去に犯した出来事は立派な異常行為で隔離もやむをえなかったかもしれません。
でも今の彼らの、他者をいたわり、自分が外に出られなくて当然だと「自覚する」状態のどこが異常ですか?外出は許されても退院は許されない、その境目はなんですか?いったいどうなったら「完治」とみなされるのですか?

「身障者の人は半額です」とある施設の受付での説明を聞いて(頭の障害者は半額にならんのかな)と考える、でもこの人は「精神病」なのです。

こうして日常を満喫している私と「病持ち」として隔離される彼ら。
その境界はあまりにも曖昧で、今まで抱いていた「精神疾患」というものに対するイメージは偏見だったのだと思い知らされてしまいます。隔離までされる患者さんは皆重病で自他への凶暴性があるがゆえに隔離もやむなしだと思いこんできたからです。
今まで当然のように感受していた「日常」がこれほどに得難い物であるという事実、帰る家のある当たり前の生活。どれをとってもわかっていながらわかっていなかった奇蹟だったのです。


そんな中彼らが犯した「凶暴性」のある行為。
ほら、やっぱり頭がおかしいからこんな事をするんだ、閉じ込めといてよかったと世間は(きっと自分も)いいます。
でも彼らはすべて納得の上この事件を起こしたのです。自分たちを価値ないものと自覚するがゆえにためらいなくなされた自己犠牲。
そして私たちが気付かなかっただけで、今までも世間の偏見の下、こうして自ら「患者」の枠にはまっていく例は多々あったのでしょう。


でもこれは小説、最後に救いがあります。
救ったのも世間、中でも最も手ごわい「法の裁き」です。

1人の裁判官の愛ある問いかけ。これがなければ事件だけが起こり誰も救われなかったのです。人を傷つけるのも人。人を救うのも人。

今まで裁判員制度に不安しか覚えませんでしたが、一般人でもこんな風に誰かのお手伝いができる可能性が0でないなら、この制度も悪い事ばかりではないのかもしれません。
ただ、本音は「当たらないで!」ですけどね、やっぱり。





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2009.06.04 Thursday 16:29 | comments(0) | trackbacks(0) | 
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