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2012.04.26 Thursday  | - | - | 

「おとぎの国の科学」 瀬名秀明

本書は「パラサイト・イブ」「BRAIN VALLEY」などのベストセラーを著したホラー・SF作家であり、またミトコンドリア研究で大学で教鞭もとった科学者でもある瀬名秀明氏の初のエッセイ集となっている。

科学者として論文を書き、小説家として物語を書く筆者が考える「書く」行為とはなんなのか。
それを受け取る私たちの「読む」行為はどのような意味を持つのか。
文理どちらにも身を置き、書き続けた筆者にしか伝えられない想いがここにある。


科学で物事を説明する時、そこにあるのは事実と客観性だ。
もっとも分かりやすいのは「死」の解釈か。
科学で「死」を論ずれば、生体反応の停止・蘇生の不可能な状態などと定義される数字と脳で理解する「死」だ。
これが物語・文学だと「生きる屍」などのように主観的な「死」も含まれる。「心」という、数字で表せず目にも映らない象徴的なものに支配される「死」である。
ゆえに科学と文学は「対(つい)」・相反するものとして長年語られてきた。「理系」「文系」で進路を分けるのはその最たるものだろう。

でもそうではない、そうではないのだ。

科学には文学が必要で、文学にも科学が必要なのだ。
ミトコンドリア研究のエキスパートだった瀬名氏がミトコンドリアを題材にした小説を書いた。これはいったいどういう事か。論文で表現できない「心」を小説にしたからだ。
そして「心」だけではこの傑作は生まれない。科学を真摯に、謙虚に研究し瞠目してきたからこそ到達する結果だった。
では、文系作家が書く恋愛小説や時代小説に科学はどう関係するのかと言えば答えは簡単。読むのは「人」だという事である。

目や耳や、時に手を使って人は言葉を脳に取り込む。これは単なる生理的反応、この行為自体に感情や心は存在しない。
言葉は脳で処理されて、初めて心に響く。

「バカ」、「アホ」と書いた落書きから 人は世の無常を読みとれる。
「色即是空 空即是色」と書いた経典に唾吐くことだってできる。
「読む」とは肉体の恩恵とそこから生まれる精神の共鳴が合わさって初めて成り立つ、科学的正確性と文学的主観性の複合のなせる技なのだ。

科学だけで「読む」行為を定義づけるのではない。文学だけで「読む」行為に溺れるのでもない。
ここでも文理は切り離される必要がないのだ。



本書には何度か「クオリア」という用語が出てくる。
これは、例えば「林檎」と聞いた時、まざまざと浮かぶ「林檎」の赤色、つやつやと水滴をはじく表面の質感、食べた時の満足感など脳裏に浮かぶ一連の感覚の事であり、この概念の導入こそがコンピューターに心を持たせるための最重要課題とも言われているそうだ。

私たちにとって機知と示唆に満ちたこのエッセイは、筆者にとっても自分探しであるという。
ならばこのエッセイで筆者のその目が映す物は何だろう。その脳が処理し「心」としていくのはどんな事だろう。
その過程を俯瞰的に眺め続ける読者は、ある意味神の立場かもしれない。

生めよ、増えよ、地に満ちよと願った神の慈の心を持って、願わくばその目に映るもの、心となるものが光あふれるものであるようにと祈る。
この祈りの気持ちこそ、この本の「クオリア」ではないだろうか。






こちらの書評はbk1の7月10日付「なるほど!書評」に選んでいただきました。
ありがとうございました。

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2009.07.24 Friday 16:04 | comments(0) | trackbacks(0) | 
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