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2012.04.26 Thursday  | - | - | 

「君が降る日」 島本理生

「恋」
とてもよく知っているのに、これほどわからないものもない。

何がどうなったら「恋に落ちた」と言えるのだろう?そもそも自覚すら難しいのに証明することなど無理な話だ。
ただ、相手を想う時心を満たす「何か」がある事だけは実感できる。大概それは温かく、思わず笑みの浮かぶような幸せな感情だが、なかには辛い痛みを伴うものもある。
そして作者はいつも後者に目を向ける人だ。

第18回山本周五郎賞候補作にもノミネートされた「ナラタ―ジュ」で感じた、贖罪の恋愛感は今作も健在だ。
この作者の描くヒロインはいずれもみんな、自分を求めて差しのべられた手を必ず振りほどいている。即座に振りはらったり、一度手に取ったのち手放したり、そもそも気付かなかったり…。
意図的でも無自覚でも、とにかく手に取らなかった自分の選択を歯がみ、後悔し、でもその選択を正す気のない自分への怒りと嫌悪すら持って贖罪しながら1人で生きていく。

恋愛小説と銘打ちながら作者は「恋愛=魅かれあう男女」を描かない。「男」を通して「女」である自分を見ているだけだ。むしろ自分を見つめる手段として他人が必要で、それがたまたま「男」だったから「恋愛小説」という形を取っただけ、と言える。

つまり作者は初めから「恋愛小説」を書こうとしていない。ヒロインと同じ生き方をしてきた作者の懺悔の告白を小説にしているのだ。
贖罪の触発が男性でなければならなかったのは、作者が男性を明らかに違う生物として別格視しているからだろう。
おそらく作者にとって「男性」とは側にいて欲しいのに側にいても苦しくなる、自分でも持て余す感情を抱かせる不思議な存在だったのではないだろうか。苦しみながらもどこか王子様然とした男性像がその事を裏付ける。
自己憐憫と自己嫌悪。男性不信と男性崇拝。
せめぎ合う作者の感情がそのままヒロインの葛藤となって映し出されている。

この作者にとって作品とは、一番見つめたくないものを見つめる事で初めて生み出せるいわば勇気の結晶だ。向き合う勇気に比例して作品の純度が高まるのだから因果と言うよりない。
せめて世に出して人の目に触れさせたい、と思うのも道理だろう。そうでなければこのような自傷行為、耐えきれるはずがない。

そんな作者が表題作で「恋人の死」という自分の意思にかかわらず否応なく手から切り離される立場を描いたのは、大きな変化のように思える。

懺悔とは結局内なる自分を見つめての行為、他人に触発はされても他人を踏みこませない自己完結の行為だ。
しかし今作のヒロインはいずれも、自己完結しながらも周り(他人)を見回す余裕がある。
憐れんで謝って後悔して終わりではなく、母に、妹に、友人に(これらはすべて女性だ)感謝を伝える気持ちがあるのだ。
これは作者の「男性」への不思議意識が薄れてきたせいとも言えるだろう。

調べてみると作者はこの作品の頃、ご結婚されている。やっぱり。


読後感は相変わらず苦しい。ヒロインは結局1人だから。
でも寂しいままでいるとは思わない。

作者はもう、それを望まない。





こちらの書評は7・24付のbk1の今週のオススメ書評に選んでいただきました。
ありがとうございました。
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    2009.07.31 Friday 18:49 | comments(2) | trackbacks(1) | 
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    2012.04.26 Thursday 18:49 | - | - | 
    カフェカフェ (2009/08/01 2:19 PM)
    はじめまして。
    島本さんの本は「ナラタージュ」しか読んでいませんが、確かにある種「作者の懺悔の告白」的な文章だなーと自分も思います。

    そういうとき、普通だとついつい私小説っぽくなりすぎてしまい、純粋な文学にはならないですが、島本さんはそこをうまく「昇華」しているなーと思います。

    ぜひ、こちらの本も読んでみたいですね。
    素敵な本の紹介、ありがとうございました!
    はりゅうみぃ (2009/08/02 2:02 PM)
    カフェカフェ様
    コメントありがとうございます。
    よくこのような電脳最末端ブログを探し当てて下さいました!

    >島本さんの本は「ナラタージュ」しか読んでいませんが、確かにある種「作者の懺悔の告白」的な文章だなーと自分も思います。

    ホントにそうですよね。
    あの作品はこれよりもっと恋愛特化、もうとにかく自分を追い込んで責めて憐れむ作品なので、読んでて苦しいったら…(笑)
    もし友達だったら一緒に泣きながらも「もっと他にも目を向けんか―い!」と背中をパーンと一発お見舞いしたやりたくなると思います。

    >そういうとき、普通だとついつい私小説っぽくなりすぎてしまい、純粋な文学にはならないですが、島本さんはそこをうまく「昇華」しているなーと思います

    ああ、なるほど〜!なんてクリアなご分析。
    たしかに一歩間違えたら妄想日記です。
    「昇華」…素敵な表現♪


    >ぜひ、こちらの本も読んでみたいですね
    カフェカフェ様のブログ、拝見しました。
    読まれましたら是非感想書いて下さいね♪

    わたしも本だけ詰め込んでどこかで読書三昧したいです。











    君が降る日 島本理生
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