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2012.04.26 Thursday  | - | - | 

「天地明察」 冲方 丁

4月20日に投稿しようとして、その日に本屋大賞を受賞されたため、タイミング的に何やら照れくさく公開を控えていた「天地明察」の感想です。受賞を祝して、最後を書き足してあります。

とても面白い小説でした。ストーリーだけでなく、ここに込められた(と、私が思う)作者様の想いに胸打たれました。で、このような感想に…。
直木賞候補にも、なられたとか。ますますおめでとうございます♪

少々ネタバレしておりますが、ページを折っておりませんので未読の方はお気をつけ下さい                

              
               *          *         *


雨露を含んで、綺羅めきを増す新緑が美しい。
萌えぐ若さが輝き光るのは、植物も人も同じである。


30代前半のライトノベル作家が描く時代小説。
親しみやすい表現と鮮やかな展開で、天地の理(ことわり)を追いながら人の理をも同時に描く、作者渾身の意欲作が本作「天地明察」だ。

天に星なければ星の図は成されず、地に人なければ星の図は必要とされない。
人に生なければ学を極められず、生に縁なければ学を伝えられない。
若さは未熟ではなく可能性、齢を重ねる事は縁を重ねる事。
作者は江戸時代の暦学者・渋川春海の生涯を通じて、このメッセージを痛快に明快にうたう。


例えば北斗七星。
星を繋げて柄杓を描くが、実際の星々は隣接などしていない。100光年から1000光年まで隔たりあう星が柄杓の形を成すのはあくまで見かけ、この地球に生きる人だけが見る事の出来る奇跡の図だ。
本作で春海を取り巻く魅力的なあまたの登場人物たちは、それぞれが人の世の綺羅星といえる。春海だけが、そこに縁(えにし)の糸を繋いで、この世に「北斗」を成せるのである。
彼の遺したもっとも偉大な功績は、偉業を達成し歴史に名を残したこと(だけ)ではなく、人の縁の糸を見つめ、繋ぎ続けたことだと作者は伝える。

行間から滲む情を慈しむような、先達作家の描く時代小説とは明らかにタイプが違い、それを「若さゆえ」と穿つ気持ちも、正直なくはない。
が、本作の魅力はその「若さ」にこそあるのだ。
セリフだけで個性が区別できるほどしっかり書きわけられた、いわゆるキャラ立ちした登場人物、画像が浮かぶかのようなメリハリの利いたシーン展開など、随所に感じるのは作者の「演出眼」だ。作者はアニメやマンガなど、画(映像)や場面を常に意識して作話する、脚本家タイプの方なのだとよくわかる。
この表現感覚こそが、画や音などで感覚を補足されながら、作品を理解する事に慣れている読者層に最も有効なファクターなのである。

作者がご存じでなければ、伝えたいと思う。
この本を読んで、これから何にでもなれる事が嬉しいと言った中学生がいたこと。
数学の授業がちょっと楽しみになったと語った高校生がいたこと。

どんな傑作でも、読む人がいなければ、存在しないのと同じことだ。
先細り必至の時代小説の読者層と、ただ今全盛期のコミック・ライトノベルの読者層を結びつけた、本書の功績は計り知れない。



ではこの作品は、若い世代や、時代小説に縁のない読者層にとってだけ有意義なのかと言えば、これがまたとんでもない。
むしろそれ以外、時代小説もそこそこ嗜む、不惑・天命といった世代こそが読まねばならない作品なのではないかと思っている。

先の学生達のような、未来に光を見い出せる世代が、春海の生き様に心震わせたように、作者自身も春海の生き方に憧れを、もっといえば、彼の様にこれからも生きていくというご自身の誓いを、この作品に込めたように私には感じる。

が、いくら春海でも、「綺羅星」なければ「北斗」は紡げない。
今生きている若い世代が、未来に希望を見るのか、諦念を見るのか、それは先達である大人次第だとこの作品は遠巻きに伝えている。
青いだの甘いだのと言う前に、己の後をついてくる人間はいるのか、誰かにとっての綺羅星になり得ているか、歩んだ我が道を振り返ってみろと言われているに等しいのである。
作者が時代小説を書いた理由、なんだか見えてくるではないか。

なんとも重く、熱く、面白いラブレターを、作者は書いてくれたものである。



本書は今年度の本屋大賞を受賞された。(おめでとうございます)
世代・性別関係なく、多くの読者が手に取るだろう。
先の学生のように、本書で志学を実感し、中には、第二、第三と、春海や関の後進が育っていくかもしれない。
娯楽に娯楽以上の志を見出す。これも明察。書の力。

そして我々壮年世代は、彼らの布石となるために、己の成せることを精一杯見つめ、精進せねばならないのだ。





さて、私。
作者のような綺羅めく才能もなく、気力も体力も下り坂。
が、次世代に本書を紹介することぐらいは出来そうか。


あの学生たちの、キラキラした眼。
ここにも、地上の星。













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