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2012.04.26 Thursday  | - | - | 

「龍神の雨」

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ここ1年ちょっとの道尾作品って、少し変わってきたよな〜。

と、感じるのは私だけではない気がする。(よね?)
全てではないとはいえ初期作からコンスタントに読み継いできて、「ん?なんか違うぞ?」と感じた最初の作品、いわば創作源流の分岐点と思えるのがこの作品だ。


「雨のせいで」「雨のせい」「雨の…」「雨の…」「雨の」…
タイトルから、目次から、本文から、病的なまでに繰り返される「雨」のリフレインが、まるで台風=雨や風による暴力のごとく激しく脳裏に降り注ぎ、読者を感涙の世界に溺れさせていく。

天災か人災か、雨に流され翻弄される2組の主人公・子供達は、それぞれ兄妹、兄弟の間柄である。
様々な事情で愛に恵まれなかった彼らは、信用できる「大人」などこの世にいないと思いこんでいた。

「大人」は汚い。「大人」はずるい。「大人」は黒。

しかし、彼らの考える「大人」とは親、家族だけを示している。
子供ゆえ、幼さゆえに、「血の絆」のみに真を見出す無垢な魂。そして無垢ゆえに、「疑惑」(灰)を黒=悪と断じてしまう。白か黒しかない純粋で未完な世界に生きる彼ら、幼さと高潔はこの作品では同義語である。


「弱い」大人と「汚い」大人は違うと、そろそろ彼らも知らなければならない時期だった。弱くとも優しい大人に囲まれて、穏やかに学んでいける時期だった。そうして彼らも「大人」になるはずだった、「雨」さえ降らなければ。
思春期とは子供が大人になる過渡期のことだが、見方を変えれば、大人の代表である親の「濁」部分に初めて気づく時期、若干の寂しさをもって親も自分も同じ「人」であると悟る時期なのではないかと思う。
彼らにとって最愛唯一の人間=大人(親)以外の血族を守るために取った汚れない行動は、本当の汚い大人に利用され、最悪の汚濁となってしまう。嵐がもたらす濁流で世界は決壊するのである。
そして彼らは無垢ゆえに、汚れた自分たち(だけ)の世界を許せない。

ラスト、2組の兄弟の迎える末路は全く違う。初めは確かに同じ所にいたのに、濁路を二つに分かったのは皮肉にも「大人」の力である。
結末の違う2組の子供たち。
これこそ既存作品とは違った新たな流れを感じたところだ。これまでの作品ならば、おそらく主人公は1組、結末は一つ(バッドエンドのみ)だったのだはないだろうか。


今作では、作者お得意のホラーめいた異形ファンタジー設定を封印している。巧みなトリック的文章は変わらずながら、描く舞台はあくまで現実。作者が「現実社会で実際に起こりうる悲劇(ドラマ)」を終始意識しているのがよくわかる。
「龍神」という幻想的な生物をタイトルに冠していても、決して荒ぶる龍神のきまぐれから起きた運命のいたずらを描こうとしているのではなく、引き起こしてしまった最悪の現実を天災=龍神のせいに、雨のせいにしたい、この罪から逃げたい、何も起きなかった頃に戻りたいという、幼い彼らの後悔の催涙雨を作者は描きたいのだ。
さらに言えば、守ってやれなかった幼な子たちに対する龍の悲しみの咆哮、すなわち天から彼らを見守っていた父や母の慟哭だとも言いたいのだろう。
だから作中の雨は、決してやむことはない。


起きる事件や真犯人など早い段階でアレコレわかってしまうにもかかわらず、道尾作品の既存作風と幻想的な「龍」に目を奪われて、読み手が勝手にやっかいな迷宮を創り出してしまう作品である。
この読後感を肩すかしと感じるか、意欲作と取るか、意見が分かれるかもしれない。
が、この方にしか書けない作品であることには間違いない。

ダークファンタジーの皮を被ったヒューマンミステリー、今後は、今回のような「現実」により重きをおいたドラマ性の高い作品が増えていくだろうと予想できる。齢を重ねなければ書けない作品とも言えるかな。

直木賞候補にもなるぐらいだ、ゴール(完成型)はそう遠くない。
ついに到達した!と感動する自分を想像しながら、今後も氏の作品を読み続けようと思う。





 

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