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2012.04.26 Thursday  | - | - | 

「重力ピエロ」 伊坂幸太郎

こんにちは♪
 「毎月1冊伊坂幸太郎」キャンペーン絶賛開催中のはりゅうみです。
今月は「重力ピエロ」にガブリよってみました。
「小説の奇蹟」とまで書かれるほどの傑作とはいかなるものなのでしょうか?


参考までに伊坂さんの単行本化作品を年代順にひろってみますと… 
■オーデュボンの祈り
2000年12月20日、新潮ミステリー倶楽部、
2003年12月1日、新潮文庫、
■ラッシュライフ
2002年7月30日、新潮ミステリー倶楽部
2005年5月1日、新潮文庫、
■陽気なギャングが地球を回す
2003年1月、祥伝社ノン・ノベル
2006年2月20日、祥伝社文庫
■重力ピエロ
2003年4月20日、新潮社
2006年7月1日、新潮文庫
■アヒルと鴨のコインロッカー
2003年11月25日、東京創元社ミステリ・フロンティア
2006年12月22日、創元推理文庫
■チルドレン
2004年5月20日、講談社
2007年5月15日、講談社文
■グラスホッパー
2004年7月30日、角川書店
2007年6月25日、角川文庫
■死神の精度
2005年6月30日、文藝春秋
2008年2月8日、文春文庫
■魔王
2005年10月20日、講談社
2008年9月12日、講談社文庫
■砂漠
2005年12月15日、実業之日本社
2008年8月10日、実業之日本社 Jノベル・コレクション
■終末のフール
2006年3月、集英社
■陽気なギャングの日常と襲撃
2006年5月20日、祥伝社ノン・ノベル
■フィッシュストーリー
2007年1月30日、新潮社
■ゴールデンスランバー
2007年11月30日、新潮社
■モダンタイムス
2008年10月16日、講談社

と、なっており2002年からほぼ年2作の割合で単行本が出てる計算になります。もっと多作なイメージでしたけど意外と少ないですね。石田衣良さんや恩田陸さんと比べるとって事ですけど。
「重力ピエロ」は直木賞候補になった事で伊坂さんを一躍有名にした一作ですが、その後4年連続ノミネートなんて生殺し?去年ご辞退された気持もわかる気がします。

伊坂さんの新潮文庫作品の表紙は、どこかに必ずミニチュアドールがたたずんでいてそのポーズまでが作品とリンクしているという、深読み好きにはたまらない凝った装丁になっており、ついつい先に手に取ってしまいます。次文庫化は多分「ゴールデンスランバー」と思いますが、どんな人形がどんな背景の中にいるのか、楽しみです。

文庫化の際に若干改稿・増ページされていて、そこを比べてみるのも面白いかなと思います。(ハードカバーを持っていないので私はできませんでしたが)

次ページ、こちらを読んでからでも本作を楽しめるようギリギリにしましたが、かなりのネタバレ度です。未読の方はご覚悟下さい。

 

 表紙でウキウキしているとドカンと落とされるのが伊坂作品ですが、本作もその期待を裏切りません。(重力だけにね)

伊坂さんの小説を読むといつも必ず浮かぶのは「エッシャーの騙し絵」です。本作にもちらっと出てくる「エッシャー絵」は、伊坂さんの隠れテーマではないかと思います。
リアルな虚構。目に映るものの否定。無限。ユーモア。限りなく絵画的な小説。
「エッシャー」そのものじゃないでしょうか。
                               

春が二階から落ちてきた。


冒頭の一節の何と深い事か。
もともとは、同級の女子高生を助けるために現場へと飛び降りた弟・「春」の姿を外から見ていた兄の俯瞰描写です。
この時の「春」は、自分の生い立ちに対する負の怨念が未消化のまま体中でとぐろを巻いている状態。怪我も恐れず飛び降りる「春」の姿は自暴自棄にも見え、父や母との思い出を噛みしめているようでもあります。

父と母、「私」と「春」 家族4人でサーカスを見に行った時、2人の子供は空中ブランコのピエロに釘付けになります。
重力などないかのように自由に空中を舞う舞い飛ぶピエロ。
落ちたら死んじゃう!と怖がる子供たちに、両親が大丈夫だと教えてくれます。何故なら、
「楽しそうに生きていれば地球の重力なんてなくなる」
「その通り。わたしやあなたはやがて宙に浮かぶ」

この2人がこの言葉を呟けるようになるまでにどれほどの辛酸をなめたのか、ここまで読んできた読者は知っています。その重みを子供たちはここでしっかり受け止めるのです。
「重力ピエロ」という妙に親しみやすい響きを持つこの不可思議なタイトルは、そのまま本作で語られる親子の象徴です。

「春」にとって父も母も兄も、家族そのものがこの世で1番愛しく1番辛い存在。
愛すれば愛するほど自分を消したくなる。彼の心は重く苦しく、重力から解き放たれることができないのです。でも家族を愛しているから、あの時の言葉を信じてためらいなく体を投げ出せる。
そして兄の「私」だけがその姿を見ています。

「春」の解き放てない苦しみは、様々な奇行に現れます。その行動の一つ一つに音ない悲鳴が聞こえるようです。そうして彼は正気を失うという方法でピエロになろうとしているかに思えるのです。


家族は体をはって「春」を繋ぎとめます。
彼が狂ってしまわないよう、家族は大きく大きく包み続けるんです。

怨念の昇華を絵に見出したかに見えた、展覧会での大賞入選。
そこで起こる悪意に満ちた嫌がらせに「春」はキレますが、母はその上を行くキレ方をして「春」を肯定します。文字通り「体を張って」。バシーン!とね(笑)
※その後「春」が「落書き」という手段を選んだのはこの出来事を思い出させます。描いては消す行為はいわば代償的な自傷行為。
彼にとっての絵画=家族にはない才能、それは死にたくなるほどの事実を突き付ける残酷な証拠なのです。

それでも飛べない、苦しみから解放されない「春」。
彼は更に重荷を、この世で1番重い罪を背負う道を選びます。父と母と同じ所まで飛ぶために。本作の病的とも思えるぐらい細かな段落分けと象徴的なタイトルは「春」の心の機微そのものです。
それを眺め、よりそう「私」は「読者」の私でもあります。
「私」は「春」が唯一信じる裁き、良心です。兄にはすべて従う。だから傍ですべて見ていてほしいのです。
「私」にはその役目を引き受ける覚悟があります。この世でたった一人の弟だから。


本来「春」のとった解決法は人に許される事ではありません。どんな理由があってもしてはならない事です。この行為の報いはいつか2人は受けるのでしょう。
でも本作が伝えたいのはそこではなく、そこを通して見る、母性や父性に象徴される無償の愛と魂の遺伝です。(だからそこを明確にしないまま話を閉じるのです。)

父はきっとこう考えたでしょう。
たとえ罪を犯したとしても、何か相当の理由があったに違いない。あいつらが理由なく凶行に及ぶわけがない。何故なら私たちが育ててきたのだから。
この絶対の自信と信頼。これがあるから子供は自由に羽ばたけるのです。
この世でもっとも重い罪を犯してなおのこの信頼。ここまで示された子供達、あとは何を疑えばいいのでしょう?

そして最期に父は、兄弟2人が1番欲しがっていた明確な答えを命をかけてくれるのです。
親子とは細胞レベルではない魂を伝えて遺く関係、すなわちDNAが表現できない遺伝子があるのだと。


「過去」を救う母。
「今」を救う兄。
「未来」を救う父。
家族によって生かされ、活かされ、「春」は初めて、生まれてきて良かったと思えるのです。
やっと、この言葉を呟けます。
「楽しそうに生きていれば地球の重力なんてなくなる」
「その通り。わたしやあなたはやがて宙に浮かぶ」



春が二階から落ちてきた。

物語の締めもこの1節。同じ表現ながら「春」の心の在りようは冒頭と全然違います。
この後「春」はきっと兄に言うでしょう。

父と母のように。飛ぼう。2人で。






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    2012.04.26 Thursday 05:21 | - | - | 
    kirara (2009/04/25 4:43 PM)
    はりゅうみさん、はじめまして。こんにちは。
    わたしのブログにも、お越しいただきありがとうございました。

    こちらのブログは、内容が深いですね。すごいです!
    それに比べて、わたしのブログは、あっさりとしたもので、お恥ずかしいです。

    「マンガしりとり」をしていらっしゃるんですね。
    わたしは、「写真しりとり(看板)」をしています。
    「しりとり」というワードでも、はりゅうみさんと、つながりがあることが、うれしくなっちゃいました。

    はりゅうみ (2009/04/25 11:26 PM)
    kiraraさん、こんにちは!
    わざわざお越しいただいた上にコメントまで!
    ありがとうございます。

    もう堅苦しい内容で申し訳ないです…。

    専用ブログまで運営されるほど深い伊坂さんへのご理解と知識、とっても勉強になります。
    特にリンク作品!画面前で鳥肌です。
    これからもいろいろ教えて下さい。

    その上「しりとり」仲間とは感激です。
    「看板」かあ、面白そう♪
    早速拝見しに参ります♪♪

    (2009/09/11 11:35 AM)
    こんにちは。

    「重力ピエロ」私はラスト前30ページ
    から、ボロボロ泣けてしまいました(;;)
    その後、はりゅうみぃさんのこの記事読んで、ツボが私と一緒だったので、更に泣いてしまいました!!

    伊坂作品まさにエッシャーの騙し絵ですね!
    目に映るものが真実ではない。
    今回は、シャガールのように楽しく陽気な絵を描いて、その裏には春の悲痛な叫びがある。心の重荷を「重力」になぞらえる伊坂さんのセンスと最強の家族の繋がりにやられました!

    他のレビューを見ても、タイトルの意味がわからない、とかオチがわかって面白くないとか・・読み取れない人がこの作品をけなしてる記事が多くて・・。
    私もジョーダンバットを用意しようかと思いましたよ。(^^;

    リンク集に当ブログを加えて下さってて嬉しいです!!私も貼らせていただきます^^
    仲良くしてくださいねっ★⌒ヾ(^−’*)
    るるる☆ (2009/09/11 11:37 AM)
    す、すみません・・ヾ(;´Д`●)ノぁゎゎ
    上のコメントるるる☆です。
    はりゅうみぃ (2009/09/12 12:44 AM)
    るるる☆さん、いらっしゃいませ〜♪

    重力ピエロ泣けましたね…。
    読んでしばらくは、本棚の背表紙見てもじわっときてました。(;^_^A

    これは世代や性別でツボや好みがわかれるかもしれませんね〜。


    >シャガールのように楽しく陽気な絵を描いて、その裏には春の悲痛な叫びがある

    そうそう!まさにサーカス、まさにピエロの涙のような刹那な陽気さなんですよね。
    「春」の夜の夢の如し、とでもいいますか。

    >私もジョーダンバットを用意しようかと思いましたよ。
    わはははは、行動的!
    振り回す前に準備運動しなければならない足手まといですけど、私もご一緒させて下さい(笑)


    お断りもなくリンクしてしまってすみません、こちらこそ幾久しく宜しくお願いいたしま〜す♪










    重力ピエロ 伊坂幸太郎
    兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。 謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実と...
    | 粋な提案 | 2009/08/19 1:35 AM |