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いらっしゃいませ
◆拙ブログカテゴリー・ご案内
◎さくら書房…読書感想・書評です。ジャンル問わずなんでも読みます
・ブログ感想&レビュー…「ですます調」
・投稿書評…「だ、である調」
と、文体を変えています。日によってコロコロ変わるのはそのせいです
読みにくくてすみません…。

基本・ネタバレてますです。
◆オンライン書店bk1様より
鉄人癲イい燭世ました   
 ★5月10日 bk1投稿記録更新しました


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2012.04.26 Thursday  | - | - | 

「コロヨシ!!」 三崎亜記

お久しぶりでございます。

目やら頭痛やらその他諸事情で、長らく開店休業状態の拙宅でございました。

留守中もたくさんのご支持いただいておりましたこと、厚く御礼申し上げます。
お訪ね下さった皆様、拍手やコメントを下さった皆様、本当にありがとう!
何よりの何よりの励みでございます。7月はもうちょっと、書評やレビューをUP出来ると思いますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。

久しぶりに、bk1さんへの書評を書きあげました。こんなに間隔があいてしまったのは初めてで、勝手をすっかり忘れており、いつにも増して、まとまっておりませんが、想いは全部入れた(というか、入れ過ぎたf(^^;)  )ので、よしとしよう…。


いつもなら投稿とブログのUP時期はずらしておりますが、今回はお久しぶりのご挨拶も兼ねまして、同時UPとさせていただきます。
ダラダラ長々と書いておりますが、よろしければお目を通してやって下さいませ。
一応、bk1版とはちょこーっとだけ変えてあります。(数行ですけど)

bk1版「コロヨシ!!」はこちら★


ネタバレは多少ございますが、ページをおりませんので、未読の方は気をつけ下さいませね。
    
            
               *           *           *


毎日毎日、雨が降る…。

こんなお天気じゃ掃除も出来ないもんね、などと、都合のいい大義名分を用意しつつ、読書タイムに突入する。
近頃のお気に入りはコレ。ジメジメ気分を吹き飛ばす、痛快青春小説・三崎亜記さんの「コロヨシ!!」である。


この作者の描く世界は独特だ。
平凡な日常生活の中に、一点だけドでかい荒唐無稽をほおり込んで、素知らぬ顔で淡々緻密にストーリーを語っていく。あまりに見事な知らん顔に、初めは激しく戸惑って、まるで、見知らぬ町で独り取り残されたかのようなオロオロ感を味わうが、落ち着けばまわりは見えてくるもので、見えてきたら今度は景色の非凡さに魅了され、気づけば他作まで追いかける立派なファンのいっちょあがりとなる。←私のことです

いくつか作品を読むと、更に違う景色が見えてくる。
作者の描く「荒唐無稽」、廃墟をわざわざ建築したり、「町」が消えたり、鼓笛隊が襲ってきたりと、一見ナンセンスなピラメキに思えてしまうこれらのモチーフで、作者が浮かび上がらせたいのは、作者の考える「人」の定義なのだなと、分かるのである。

「建物」は人を厄災から守るために構築するもの、その建物が集まれば「町」となり、町が群れると「国」になる。

人嫌いと公言する人でも、大洋の無人島ではなく「人」が作った建物に住み、「人」の提供したライフラインや娯楽を利用し、ルールに従い生活を送る。
縛られたくない、自由になりたい、と言いながら、枷多い「町」の暮らしを選ぶのは、本当の自由が寂しさとイコールであることを知っているからだ。
束縛があって、初めて自由を満喫できる「人」。もう、ケモノには戻れない。

「構築」と「集合」は作者の考える「人」の証し、様々な荒唐無稽・構築と集合を描くことで、そこに浮きだす虚の中の真、泥の中の玉、不変の「是」なるものを伝えてくれる。
と同時に、人として生きる読者に「是」、それでいいんだ、安心して?と伝えるためにも作品を書いているように思うのだ。
だから、微妙にシュールな世界をたっぷり読まされても、読後感はいつも爽やか、時に暖かいものでいっぱいになる。作者はいつも、欲しい言葉をくれるから。


作者初の王道青春小説だという、この作品も同じだ。
「掃除」という謎の競技やら、部活やら国家の陰謀やらと、「団体」「仲間」「競技」「学校」「国」という人の集合に、荒唐無稽と日常を折り込みながら、作者の思う「是」を描く。

この世に絶対にないと言い切れる世界なのに、ビジュアルまで浮かぶほどはっきり理解できるのは、毎度の卓越した構築手腕と、もう一つの作者の魅力「言葉の妙」が、今作では特に光っているからである。

言葉とは文字の集合とも言えるが、これまでバラして再構築するのが、作者の作話の根源とも言える。
ビルにある7階、ではなく 7階のあるビル。
本を「納める」図書館ではなく、本を「治める」図書館。
守る蔵ではなく、蔵を護る。


そして、今作の主人公の高校生・樹。
高校の掃除部に所属している彼は、突出の才能を持ちつつも、なぜか競技に夢中になることが出来ず、周りに流されるまま漠然と部活動を行っている。が、良き仲間、ライバル、師を得て、パートナーと共に、己と技を磨こうと懸命に生き始める姿を描いたのが今作だ。
「掃除」というスポーツがキテレツである他は、まさしく青春スポ根小説。必殺技や陰謀、ほんのり恋心まで出てきて、わくわくと大変面白い。

が、この「掃除」という競技こそがクセものだ。
謎の競技「掃除」は、武道のような、フィギュアスケートのような、不思議な競技だが、間違いなく家事の「掃除」でもある。
家事・「掃除」とは、舞う埃を集めて綺麗にする行為、磨き上げられた床や窓を見て誇らしく思う作業である。結果、人は美しい住まいで健やかに暮らせるのであるが、これを作者のもう一つの魅力で料理すると…。

誇り(ホコリ)を懸けて宙(そら)を舞い、空(そら)舞う塵埃(ホコリ)を回収する。そのために、床を磨く技に、磨きをかける。

…のが競技・「掃除」というわけだ。ぷっ、わはは、ダジャレギリギリ!


今作はストーリー的には第一部、「国技」のない「この国」と掃除の関係をほのめかして終了しているが、もし掃除が国技になったなら…国民が国の保護で技を磨き、結果「美しい国」が生まれることにならないか。

マツリゴトとは、祭り事でもあり、政つり事。
もはやダジャレではなく風刺に近い。


作者は、ダジャレかいなと思えば笑える言葉遊びの余裕を持って、構築と集合を賞賛している。
「遊び」という言葉が、遊興と勉学の二面の意味を持つことを考えれば、この作者は物語を書くように生まれついた、としか思えない。


オモシロ仕込みは他にもまだまだある。
独特の景色鑑賞、王道スポ根の楽しさの他に、隠しアイテムやボーナスステージを探すようなお楽しみのおまけ付きというわけだ。作者からの挑戦状と言えなくもない。

悔しいことに、私も全部は見つけられていない。だから、また読んでしまう。現在連載中の第二部を読めば、きっともっと見つかるだろう。そして、見つけた仕込みを誰かに話したくなる。
だって私も、町に住んでる「人」だもの。




雨が上がった。
梅雨の合間の貴重な晴れ間だ。気が進まないが、我が家も掃除しないとね。
掛け声でもかけて、気合入れるか!どっこいしょ、ではなく、「頃良し!!」と










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2010.06.23 Wednesday 14:07 | comments(2) | trackbacks(1) | 

「横道世之介」 吉田修一

あの時、あんなに輝いていた時間が、いつのまにか光を失う。

あの時、あんなに大事だった人が、いつのまにかくゆり霞む。 

あの時、あんなに胸を打った想いも、今や記憶の隅である。



「横道世之介」
一度聞いたら毎度うっかりフルネームで呼んでしまいそうな彼と、僅かに自分の青春を交差させた人々が、二十数年を経てその時を思い出す。
あいつといて確かに楽しかったのに…。
こんなに印象的な名前を彼らはすぐに思いだせない。それほど、時は流れていたのだった。


若い時は、手にしよう、つかもうと、前だけを見据えて求めつづけ、今は、手につかんだものを大切にしたいと思う。近い将来は、遺していく大切なものに後ろ髪をひかれつつも、天に召されるのだろう。
誰もがこうやって己の人生を進んでいき、共に歩むと心に決めた伴侶でさえ、各々の人生が重なりつづけるわけではない。
前だけを見つめ続けた青春の時に、わずかに交差する友情。愛情。すべて覚えていられやしない。それがあたりまえだ。


「忘れる」ことは、人が人として生きていくために必要な行為である。
体験、思考、それらをすべて覚えていたら人の肉体も精神も数年で壊れてしまう。
激しい怒りを和らげ、苦い後悔を許し、過ぎた過去から煌めく想いだけをすくいだす。
あたりまえに「忘れる」から出来ることだ。だから、今、人は野生動物よりも長く生きられる。

人の心を救い、戒め、律するよすがともなる「忘れる」ということ。
だからこそ、忘れ去ってはいけないことがこの世にはある。
作者は、だから、この小説を書いた。 書かなければいけないと思った。
これは作者が綴った、感謝と警告と誓約の書だ。

過ごした時を忘れてもいい。伝えられなかった想いを忘れてもいい。
でも忘れたままにはしない。必ず思い出し、名前を呼ぶ。たとえ、ほんの時々、心でつぶやくだけだとしても。




私にとっての世之介、きっともう出会っている。

まだ、間に合う。心でつぶやくだけでなく、彼に、彼女に会いに行こう。
貴方に会えてよかったって、伝えに行こう。


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2010.05.26 Wednesday 11:51 | comments(1) | trackbacks(0) | 

「中島千波 さくら図鑑」 中島千波

今週のbk1の書評ポータルで「なるほど!書評」に選んでいただいた「中島千波 さくら図鑑」の書評ですが、実は別バージョンがありました。
本日はbk1に投稿しなかった方の書評をUPいたします。

伝えたい事は同じですが、投稿作よりもう少し主観的(つぶやき風)に書いています。
この他もう1バージョン完成させてますのでこの1冊だけで3回清書?したというf(^^;)
出来不出来はともかく、完成までこぎつけたものを3つ書くのは相当珍しく&しんどかったです。それだけ迷ったってことなんですが…。

「絵画(感性)」について文を興すのは本当に大変だと実感させられます。
絵と文字、両方の情報がある「マンガ」の感想が一番まとめやすいです。次にたくさんの文字(情報量)がある「小説」、「絵」しかない画集の書評は情報が少ない分思考がいくらでも広げられるので、枷をはめるのが難しいのです。
って、書いてみて分かったのだった。

こんなことやってるから1月に1,2本しか仕上がらないんですね〜…。
「納得出来るまで書く」という目的は達しているから別にいいんだけども…。
 
     
                                 


今年も桜が咲き始めた。


桃が咲き始めてもテレビで大きく伝えたりしないし、椿が散ったって新聞には載らない。
桜だけが、その開花を追いかけてしまうほど日本人の心を騒がせる。
なぜ私たちは桜に心騒ぐのか。静かでいられないとわかっているのになぜ追いかけるのか。この画集を眺めていると、その答えが分かるような気がするのである。

本作は桜花図をライフワークとされている中島千波氏が全国を巡って描いた「銘桜」の画集である。「さくら図鑑」と題名にうたわれる通り、岐阜・京都・奈良・福島…と日本中の桜の銘木が実に50本以上、華麗な日本画となって収録されている。どの作品も完成図とスケッチ(下絵)を合わせて載せてくれているので、氏が樹をどのように写し、紙に映していったのかが手に取るように分かり、絵を観る人にも描く人にも興味深い内容になっている。

「日本画」だから掛け軸サイズ、と想像して本書を開くと裏切られる。幅3Mを軽く越す四曲屏風に堂々と描かれた桜花図の方が多いからだ。艶やかな色彩で再現されたたった一本の桜の圧巻なこと!大きめとはいえ、手に収まる画集でこの迫力。本物はさぞや…と思わせる。
同時に驚くのは「下絵」だ。プロなのだから当たり前なのだが、かなりの精度で描かれていて思わず「うまっ!」と声が出てしまう。が、仕上がった完成図に描かれた桜の花は、スタンプで押したかのように単純な、図案化された桜だ。この簡素で素朴な小さな一輪一輪を、本物の桜と同じように一本の木に降るように咲かせていくでのである。
完成図を見た後で知らされる事実と、その気の遠くなるような作業に思わず言葉をなくす。

数メートルにも及ぶ紙の上に数え切れないほど散らされて満開に咲き誇る一本の桜。それは圧倒されるほど力強い生命力を持ちながら、深い幽玄・静謐も伝えてくる。
激しさと静けさという矛盾とも思える感性を同時に表現できるのは、これが「日本画」だからだと思う。

本来「絵画(え)」とは描いてこそ生まれる存在だが、日本画の魅力とは「描かないこと」でもある様に感じる。描きこまれた画題(桜)と共に、描かれなかった白=余白に意味を見出す絵画とでも言えばいいのだろうか。
中島氏が描いた銘木は、すべてが風光明美な地にたっているわけではない。背景に民家が入ったり根元に柵や看板が立っていたりもする。
が、完成された桜花図には咲き誇る桜しか描かれない。
絵にする時に心の中で自然と取捨選択する、と氏は本作で書いている。心にかなうものを無意識に選び取っているようだと。つまり、姿を精巧に写し取りながら、描くのは心に写る桜なのである。
ここに在ってここに無い桜。氏はそんな桜を描き続けている。


余白に意味を持たせる日本画。日本画で桜を描き続ける氏。氏の桜に魅せられる日本人の私。

分かった気がする。
桜を前に心騒ぐのは、目にする桜と求める桜が違うからだ。
花開く桜を追いかけてしまうのは、心の桜と共に在る風景をもっと見たいからだ。
あの日の桜、あの場所の風、在って無いあの人…。



世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし。

きっと今日も、氏は桜を描いているだろう。




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2010.04.02 Friday 15:37 | comments(2) | trackbacks(0) | 

「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子

私はチェスを知らない。
コマやルールはなんとなくわかっても、実際にゲームをした事がないのである。

この作品がチェスを扱っているのは知っていた。
そしてチェスの醍醐味を知らない私がこの本の面白さを果たして理解できるのか、少々不安だった。
でも、読んでわかった。この本はそんな事(だけ)を伝えるために書かれたんじゃない。


この本には3つの棋譜がある。
1つは今作の主人公・リトル・アリョーシャンが師匠や好敵手と繰り広げるチェスの棋譜。
身体に不具を持つチェスの天才がハンデを超えて繰り広げる、芸術的ともいえる手に汗握る攻防の数々。チェスを知っていたらもっと楽しいだろうと思わせる。

もう1つは彼が友と共にその生のすべてを賭けて刻む、人生という名のただ一局を記した棋譜。
捕らわれ、囚われて「そこに在るだけ」になってしまった哀れな仲間たちに息吹を与え、共に闘い、最も強い「クイーン」がその棋譜を後の世まで守り続ける。

そして最後に最も美しい棋譜、作者がこの作品を通じて読者と交わす想いの一手である。
1つ目の棋譜が少々感覚的でも、2つ目の棋譜がやや感傷的でも、最後の棋譜に気づけばそれらの不満は霧散し、残るのは感動である。


例えば絵画や音楽ならその作品に心を奪われるのは「一瞬」、その「一瞬」の意味を考えるのが楽しい。
そして書物の喜びは流れる「時」だ。心を寄り添わせ、奪われるために必要な、その時間が愛しいのである。
あらすじやレビューではなく、作品そのものに最後まで触れてその果てに生まれる「想い」。
考えられうる限りの可能性を考え、その中から自分がこれだと思うたったひとつをすくい上げる喜び。それを形にする時の高揚感。(と、捉えきれない口惜しさ)

こうして書評を綴るのは、作者と私が真剣に対峙した時と軌跡を記した棋譜と言える。
これはチェスを知ろうが知るまいが関係なく、本を読む事で誰にも生み出せる究極の一局なのである。

作者の真摯なチェスと創作と執筆への情熱は、物語を凌駕した、読書の姿勢というものを私に再認識させた。これはもう見事というしかないだろう。
感動、などというベタな言葉でか表現できない自分が悔しい。


三文だろうが文芸だろうが、マンガだろうが論説だろうが、これからもただ真摯に本と向き合う事を誓う。結果、生まれる形が疎でも歪でも、そこに至るまでの棋譜は美しいと胸をはれる自分でいることを誓う。
出来れば、人生も。





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2010.03.23 Tuesday 14:47 | comments(0) | trackbacks(0) | 

「花や散るらん」 葉室 麟

清しいほど1人の女性に惚れぬく男を描いた前作、「命なりけり」。
武士の誇りと合理性という、一見相反するような魅力を兼ね備えた主人公、雨宮蔵人とその想い人・咲弥が不器用ながら心を寄り添わせていくという、男女の情を中心に据えた(はずの)物語だった。
ところが、作者の視点は相変わらず「男」と「時代」のみに注がれ、女性はまたも神聖な崇拝対象。男の生き様と歴史背景を語る饒舌さに比べて、女性の心理描写は借りてきた猫のごとくである。
男ならば分かるはず、と言わんばかりに細やかに書きあげる侍(男たち)の心情、時代、恋心。そしてこんな男たちに愛されているから素晴らしい女性なんだと、ぼかされた根拠で断言される咲弥の魅力。
もしやこの方のクセなのだろうかと思えるあからさまな男性讃歌と女性崇拝に、読者は男性だけではないんだけれど…と少々食傷めいたものを感じたのは事実である。だからその続編の本作も未読なまま積読してしまっていた。

ところが本作は第142回直木賞候補になったという。かなり不思議だった。前作と同じ方向性なら候補にもならない、と思っていたからだ。

早速確かめた。


驚いた。生まれ変わったかのような作風だ。
作者が楽しませたい対象として、「読者」がきちんと視野に入っている。もちろん性別、年代関係なくである。(中学生がこれを読んで「感動した」と言っているのだから間違いない、笑)
前作の「男」の良さはそのままに(いや、それ以上か)、「女」の誇りも夫婦愛も友情も、何より家族の情をしっかりと時代と絡めて描いてある。
「男性讃歌と女性崇拝」が「人間讃歌」へと見事に変貌している。

その上、エンターテイメント性まで別人の如くである。
よもや前作の2人があの有名な忠臣蔵に係わってくるとは想像もしていなかった。
今までの作品で顕著だった、やや重きを置き過ぎた細かな時代背景描写はなりを潜め、時代を浮き彫る気品と情緒はそのままに、さらに読みやすさにも配慮した丁寧な文章に魅了される。
こんなおもしろい話、読んで胸躍らない方がウソである。

父・蔵人の大きさにシビれ、母・咲弥の強さに憧れ、娘・香也の健気さに頬ずりしたくなる。
彼らを取り巻く人々は、蔵人だけを助けるのでもなければ、咲弥だけを守ろうとするのでもない。彼ら3人が共に在る事を守ろうと、持てる力を尽くしてくれる。
そうしたいと思う「花」がこの3人にはある。

いつかは散る定めの花、少しでも長く綺麗に咲いていてほしいと思うのは人情だ。
主君のために仇花と散る武士の誇りもあるのなら、愛しい人を守ろうと命を賭けるのもまた武士の花。作者は時代小説でしか表現しえない「人間讃歌」をしっかりと描いた。

まだ「人間讃歌」に不慣れな故か、多少ぎこちない流れや、練り込み不足の女性エピソードに若干のおぼつかなさを覚えるものの、それも発展途上の魅力と思えば不満にならない。
今後の作品を全力で待ってしまうじゃないか。



討ち入りは語り継がれ、紅白梅図は国宝となり、彼ら3人のその後は今に伝わらない。

名を残す者も残さぬ者も、皆其々の人生を精一杯生きている。その縁(えにし)の一部がたまたま後世に残るような出来事になるだけなのだ。歴史とは人が作るのだと素直に心に沁みる。

今すれ違った名も知らぬ他人。私。家族。
誰もが「歴史」の一端を担うと考えれば、この世の生の何と愛しい事か。







【オススメ!】
ナニゲに「命なりけり」感想もプラス。
一粒で二度おいしい構成となっておりますが、問題は「おいしい」と思って下さる方がいるのかってことなのです(失笑)




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2010.03.05 Friday 16:33 | comments(0) | trackbacks(0) | 

「野村胡堂伝奇幻想小説集成」

「野村胡堂伝奇幻想小説集成」
「銭形平次」の生みの親・野村胡堂による、入手困難の幻想譚・伝奇小説を一挙集成。事件、陰謀、推理、怪奇、妖異、活劇恋愛……昭和日本を代表するエンタテインメント文芸の精髄。【限定1000部、新字・新かな】
【内容目次】
・「奇談クラブ」 第四の場合/左京の恋/鍵/枕の妖異/代作恋文/夢幻の恋/観音様の頬/音盤の詭計/大名の倅/暴君の死/運命の釦(ボタン)/乞食志願/食魔/第四次元の恋/お竹大日如来/結婚ラプソディ/白髪の恋
・「伝奇小説」 禁断の死針/百唇の譜/裸身の女仙/黄金を浴びる女/礫心中/芳年写生帖/大江戸黄金狂/天保の飛行術/江戸の火術/十字架(クルス)観音/猟色の果/幻術天魔太郎
時代小説や伝記物に詳しい選者様・末國善己氏によって丁寧に集成された野村胡堂の傑作短編集です
「銭形平次捕物帖」で有名な人情時代小説の大家がいったいどんな伝奇ものを?と興味を引かれたのがこの本を選んだそもそもの動機ですが、知らなかった…。こちらがルーツなのですね。

クラシカルでどこか懐かしい響きの日本語で語られる、妖しく儚い世界。そこはかとなく淫靡な空気も漂わせつつらエロティックな短編奇譚の数々にしばし現実を忘れて読み入ってしまいます。

サスペンスからラブコメまでこんなに守備範囲広いのか!(笑)と驚く「奇談クラブ」、月岡芳年(芳年写生帖)や浮田幸吉(天保の飛行術・「始祖鳥記」の人)も、この作家様が描くとこんなに哀しく愛に満ちた抒情派小説となるのね、と感に入ったり恐れ入ったりの「伝記小説」
ドイルの原書を中学時代に既に読んでいたという作者様が生涯書き続けた綺譚・奇談・ジュブナイル、どれもドイルへのリスペクトにあふれています。
あの「銭形平次」はここから派生した1作品にすぎかったのか、と納得できる気合の入った集大成
です。
選者様もいいお仕事してる…。この方の巻末解説を読んでから本編を読み返すとまた新たに楽しい。たまに珍解説もあるけど(笑)

ホームズ以外の作品が注目されなかったドイルのように「平次」以外の作品があまり著名ではない(私が知らないだけか、笑)作者様。
そこを高橋克彦氏は嘆いていらっしゃいましたが(それも本書で知った)、作者様はそれすら嬉しいことなのかもしれない、と思えてしまいました。

2段組でおよそ600ページ。
手元に置き、空いた時間に少しづつ読み進めて贅沢な時間を過ごす、そういう類の本だと思います。

私もそうしたかったな〜、でも高かったんだも〜ん(泣)←図書館で借りた




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2010.03.02 Tuesday 00:24 | comments(2) | trackbacks(0) | 

bk1様、いつもありがとうございます♪

テキスト力と主題掘り下げ(作品解釈)力の向上のために投稿を続けさせていただいておりますオンライン書店bk1様の「書評ポータル」で、今週私の書評を特集して下さいました。

http://www.bk1.jp/contents/shohyou/retuden213

文芸書を中心に書評を書かれている方です。作品と語らい合う時間の濃密さ・豊かさが伝わってくる、溌剌とした文章です。

溌剌…と、とっていただけるのですか、私の文章は!ありがとう、ご担当者様!
どっちかというと、どんより薄暗系だと思っていましたので目ウロコ、そして嬉しいです。


それにしても鉄人列伝…すごいな、こんな錚々たるメンバーの中に入れていただけるなんて。
なんという光栄
でも実のところ、掲載だけでもありがたいのに、鉄人にしていただけて特集までしていただく…嬉しさとありがたさと恐れ多さがごちゃ混ぜのグルグルな気持ち、が本音です。
かなり偏った評風(?)ですし書評数もようやく24本、ベテラン鉄人様と同列に並べていただくにはまだまだ役不足な気が…。なんだかすみません…。

以前鉄人にしていただいた時に書かせていただいた通り、bk1の投稿書評とこちらのブログでは文体も変えて書評もそれぞれ別々に書いております。
そしてここで初めてバクロしますが、実はもう一個趣味のサイト(音楽系…ってことにしとこうかな一応、笑)を別名でこっそり運営しておりまして…。
なのでどんなに頑張っても投稿は月2本が精一杯なのです。

bk1用の書評は勝手に「マジガチ書評」と名づけております通り、何の笑いもないマジメでガチンコな書評です。
本当は書評というより作品解釈と主題分析を元にした、感想と批評の交じった小エッセイのような一つの「作品」のつもりで書いています。
なので「起承転結」とは言わないまでも「序破急」をちょ〜っとだけ意識した構成にしてまして(ただし、上手くいってはいない)、bk1様で書評として扱って下さるのは「よっbk1様、太っぱら!」と大向こうよろしくお声をかけたい気分でいっぱいなのでございます。

あのマジガチモードから、硬派なわたくしをイメージして拙ブログをのぞいて下さったお客様、もしいらっしゃいましたらごめんなさい。ホントはお笑い大好き、マンガもラノベも大好き、アホアホサイトも熱血運営中のただのオタ主婦でございます…。
ただ、作品に真っ向から向き合って真摯に読み解く姿勢はどのようなジャンルの作品でも変わらない、この心づもりだけはお約束いたします。

               *            *           *

bk1での掲載期間が終わってからこちらのブログにもUPしておりますけど、その際手を加えたりコメントをつけかえたりしてまったく同じものにならないようにしております。(といいつつも、時間がなくてコメントつけ足し未作品もちこっとありマス。)
こんな言わなきゃ誰も分からない、地味〜な手間ををかけてしまうのは、ブログ・bk1に係わらず私の文章を読んで下さる皆様への感謝からです。

ブログというのは読んで下さる方がいるから続けていけるなぁ、と近頃しみじみ思います。
文章力や読解力をあげたいと思うのは、せっかく作家様が渾身の思いで産みだした作品の意図を、自分の無力のせいでとらえきれなかったり表現しきれなかったりするのが申し訳ないから、でしたが読んで下さる方への感謝というものも最近特に考えるようになりました。

こちらでの書評やbk1での書評を読んで下さったから、「そうだったのか」と思いました。、とお声をかけていただくことがあります。
こんな嬉しいお言葉をいただける喜び、ブログを始めなければ知ることができませんでした。

本は、読んでいるだけで幸せです。
感想を、書いているだけで楽しいです。
そして、ご反応いただけるのは何よりの励みです。


だから本に関するブログを続けていく限り、投稿はやめないつもりです。
それが、作品を創りだす作家様と私の拙い文章を読んで下さる皆様に対して私が出来る、精いっぱいの努力と思うからです。

オススメ書評に選ばれたり、こうして特集して下さる+αの喜びもいただけますし…ね。




【ブログ内関連記事・投稿書評】
bk1投稿記録
bk1・書評の鉄人?





イラストがないと寂しい体質なので、ただ今読書中の画像を…
ワカマツカオリさんのイラスト、爆ラブです♪


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2010.02.19 Friday 21:06 | comments(2) | trackbacks(0) | 
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